
本記事はF1公式サイトおよびFormula1-Data.comの公開情報をもとに構成されています。https://www.formula1.com/en/latest/article/need-to-know-the-most-important-facts-stats-and-trivia-ahead-of-the-2025-canadian-grand-prix.1ewLz7fw6Bw2AIkYQ5Za2P
【F1カナダGP 2025】100戦目の覚醒――角田裕毅、モントリオールでの逆襲へ──カナダGP、勝機を探る
2025年6月。F1第9戦「カナダGP」の舞台、ケベック州の都市モントリオールに位置するジル・ヴィルヌーヴ・サーキット。市街地に近く、ストップ・アンド・ゴーの特性を持つこのコースは、マシンとドライバーの総合力が問われる。
だが今年――ここはただの1戦ではない。
100戦目という節目に、角田裕毅は己の運命と対峙している。
幾度も苦汁を舐めたこの地で、今、彼は“過去”を超える覚悟を決めた。
セーフティカー率65%。20年で13回出動。
このサーキットは、まるで“波乱を飲み込むため”に作られたような舞台だ。
2007年、ハミルトンの初優勝。クビサの宙を舞うクラッシュ。
2011年、ジェンソン・バトンの奇跡の逆転劇。
そして2023年、角田がウォールに消えた悔しき記憶――。
この週末、何かが起きる。
ジル・ヴィルヌーヴ・サーキット特有の“混乱を生む構造”
このサーキットが位置するノートルダム島は、人工島で湿度が高く、天候が非常に変わりやすい。
快晴だった空が、数分で豪雨に変わることもある。
加えて、コース脇にはほとんどランオフがない。
一度ミスをすれば、ウォール直行というシビアな構成。
これが、ベテランですら“読みきれない”展開を呼び込む最大の要因だ。
クラッシュが頻発する理由
ジル・ヴィルヌーヴ・サーキットは、低速から高速へ抜けるテクニカル区間と、高速ストレート後のハードブレーキングゾーンが交互に現れるため、ブレーキやタイヤへの負荷が極めて高い。
2023年には、フリー走行で5台がウォールに接触し、
予選でも3回赤旗が出た。
まるで「誰かが必ず飛び込む」前提の罠のような配置だ。
過去の“波乱”エピソード3選
- 2007年:ルーキーのルイス・ハミルトンが初優勝。クビサが大クラッシュしながらも翌年復帰。
- 2011年:歴史的豪雨。ジェンソン・バトンが最後尾からの大逆転優勝。
- 2023年:角田裕毅がポイント圏目前でウォールに接触、悔しさをにじませた。
まさに、ジル・ヴィルヌーヴ・サーキットは“予想できる混乱”があるレースなのだ。
2025年はさらに荒れる?3つの要因
波乱の歴史を持つカナダGPだが、
2025年は“例年以上に荒れる可能性が高い”――
そう、関係者の間ではすでに緊張感が走っている。
では、その根拠とは何なのか?
予選・決勝に大きな影響を与えるであろう、3つの“波乱要因”を見ていこう。
タイヤ選択の難しさと天候の不安定さ
2025年のカナダGP週末は、気温は例年並みとされるものの、
断続的な降雨の可能性が高い。
しかもその降り方は、
“局地的かつ短時間”のスコール型。
インターミディエイトかスリックか――
その判断ミスが命取りになる。
さらに、ピレリが投入するのは新コンパウンド(C5寄り)。
立ち上がりのグリップが非常にピーキーで、
ウォームアップ不足=即ミスという極限の状況が予想される。
路面改善がレース展開に与える影響
今年のジル・ヴィルヌーヴ・サーキットでは、一部区間で再舗装が実施された。
その結果、コーナーごとにグリップ差が激化し、
FP1〜FP2で得たデータが、決勝では“役に立たない”可能性すらある。
実際、FP1では複数のドライバーがターン10でスピン。
「路面の読み違い」が勝敗を決めるレースになるかもしれない。
中団チームのパフォーマンス上昇
2025年は、RB・ハース・ウィリアムズといった中団チームが、驚異的なパフォーマンスを見せている。
これにより、
トップ4(レッドブル/フェラーリ/メルセデス/マクラーレン)だけでは読みきれない混戦が各所に発生中。
とくにRBのアップグレードは効果的で、
中団がトップグループに“噛み込む”展開も現実味を帯びてきた。
この状況が、ピット戦略や順位予測をさらに複雑化させている。

角田裕毅にとってのカナダGPとは
2023年、そして2024年――
角田裕毅にとって、ジル・ヴィルヌーヴ・サーキットは“壁”そのものだった。
しかし今、彼はRed Bull Racingの一員として、
“過去”と“現在”を背負ってこの地に戻ってくる。
ジル・ヴィルヌーヴ・サーキットでの苦い記憶
2023年、カナダ。
予選でリズムをつかめず、決勝ではウォールへ――
ポイント目前での後退。悔しさだけが残ったレースだった。
続く2024年も、RB時代の戦略ミスに泣かされ、14位完走。
2年連続でノーポイントという歯がゆい結果となった。
この地に対する想いは、誰よりも複雑で、誰よりも熱い。
RBR昇格、そして変化した現在地
だが、2025年の角田裕毅は“あの頃”とは確実に違う。
3月27日、RBR昇格発表は大きなニュースとなったが……その後の7戦で獲得したポイントはわずか7点。期待とは裏腹に、セッティングに苦しみ続けている現実がある。
特にスペインGPで予選最下位、決勝13位という苦戦は、誰の目にも深刻なもので、
「マシンのグリップが得られず、完調の手応えがない」と、本人も分析する厳しい状況 。
加えて、Red Bull関係者やメディアからは「今が“disaster”(惨状)だ」との評価も飛び交っており、席の危機さえ囁かれているのだ。
もちろん、首脳陣は「まだ挽回の時間がある」と支援を明言。しかし、マシンに“慣れていない”だけでは済まされない現実が、今、彼に重くのしかかっている 。
カナダGPで求められる「突破力」
だからこそ、このジル・ヴィルヌーヴ・サーキットは特別だ。
2年分の悔しさを晴らす“リベンジの場”であり、
真のRBRドライバーとしての存在感を示すチャンス。
RB時代とは違う――
マシンも、チームも、何より“角田自身”が進化している。
この舞台で結果を残せば、
角田はもはや“昇格した日本人”ではなく、
Red Bullの中核を担う存在としてF1に刻まれることになる。
戦略で決まるカナダGP。その時、角田裕毅はどう動くか
カナダGPは、過去の歴史が示す通り、読み合いと判断力が勝負を分けるレースだ。
角田裕毅は、いかに“流れ”を読み、局面を切り拓いていくのか。
セーフティカーが左右する“運命の分岐点”
ジル・ヴィルヌーヴ・サーキットでは、過去10年のうち実に8回もセーフティカー(SC)が導入されている。
波乱は“確率論”ではなく“必然”の域にある。
とくに今年は、ターン10や最終シケインの改修によって、
ブレーキングミスやアクシデント発生のリスクが増大しており、
レースの流れがSCひとつで大きく塗り替わる可能性が高い。
つまり、このレースは“速度の勝負”ではなく、“読み合いの勝負”なのだ。
天候の揺らぎが戦略に与える〝変化〟
現地の最新予報では、週末を通して5〜15%の降雨リスクが指摘されており、
決勝を含む土日セッションでは“突発的なミスト〜スコール”が警戒されている。
この“変化球”が、
タイヤ戦略とピット判断を一気に難易度MAXに押し上げる要因となる。
たとえば、ドライ→ミディアム→インターという読み違えが起きれば、
数秒で順位が激変する“地獄のパラレルワールド”が展開されるだろう。
戦略の分岐は“1ストップ vs 2ストップ+SC待ち”
今回Pirelliが投入するのは、C4・C5という超ソフト寄りのコンパウンド。
グリップは高いが、摩耗も加速度的に進行する。
「SOFT→HARD」の1ストップで堅実に行くか、
「SOFT→MED×2」+SCタイミングを読んだアグレッシブ策で攻めるか――
この“二択”は、実質的に「読みの勝負」へと姿を変える。
さらに天候が絡めば、すべてのプランは一瞬でリセットされる。
そう、このレースは“総合戦略ゲーム”なのだ。
角田裕毅、“戦略の刺客”として試される瞬間
RBRに昇格した今、角田に求められるのは単なるドライビングスキルではない。
雨の気配を感じたとき、どこで動くか。SCが出たとき、どう読むか。
チームに伝える情報の質と量、すべてが勝敗を分ける武器になる。
ジル・ヴィルヌーヴ・サーキットという“混乱の渦”で、角田がどこまで冷静に、どこまで大胆に動けるか――
戦略の針を狂わせる存在になれるかどうか、それが今問われている。
まとめ|“予測不能”こそがF1の醍醐味
今年のカナダGPは、単なるスプリントの速さでは語れない。
ここには、読み・対応・覚悟――すべてを試される多層的な勝負が詰まっている。
セーフティカーはいつ出るのか。
タイヤはどこまで持つのか。
そして、空から落ちるかもしれない“ひとしずく”が、全てを狂わせるかもしれない。
そう、このグランプリは「勝ち方が決まっていない」からこそ面白いのだ。
そして、角田裕毅はこの“読めない舞台”に、100戦目という節目を背負って挑もうとしている。
2023年、2024年と、ここジル・ヴィルヌーヴ・サーキットでの苦い記憶は、彼のキャリアに確かに刻まれている。
RB時代、“良い走り”をしても報われなかった。
それでも彼は、諦めなかった。腐らなかった。
そのすべてが、昇格という新たな挑戦につながっている。
今、手にしているのはRBRのマシン。
チームの期待を背負い、“速さ”だけでなく“勝負勘”まで問われるドライバーへと変貌を遂げた。
カギを握るのは、戦略センス。集中力。そして“変化に即応する力”。
予測不能なカナダGPだからこそ、ドライバーの“引き出し”が、そのまま順位になる。
ジル・ヴィルヌーヴ・サーキットで100戦目。
それは数字ではない。
“過去の自分”を越え、これからのF1人生を切り拓く起点となる一戦だ。
その瞬間を、僕らは見届ける。
角田裕毅という男が、F1に爪痕を残す週末を。