文=F1DIVE編集部

2025年7月6日。F1の聖地シルバーストーンで行われた第12戦イギリスGPにおいて、角田裕毅(Red Bull Racing)は15位、すなわち最下位でフィニッシュした。前戦オーストリアGPに続く連続最下位。ここにきて、彼のキャリアにおける最大の危機が現実味を帯び始めている。
しかし、これは単なる“ドライバーの不振”という言葉で片付けられるものではない。
■予選:Q2敗退と不可解なパワーダウン
予選ではQ2を突破するかに見えたが、角田は「ターン3からストレートにかけてパワーが失われた」「最後のアタックでアクセルブーストが効かなかった」と語っており、明らかな出力低下に見舞われていた。結果、11番手スタートという惜しい位置からの決勝を迎えることになる(motorsport.com)。
■決勝:スタートディレイと“いらなかった雨セッティング”
決勝レースは、スタート予定時刻直前に雨が降り出したことにより、セーフティカー先導でのフォーメーションラップが行われた後、グリッドスタートまでに大幅な遅延が発生した。
その後、路面は急速に乾いていく“裏切り”のコンディションに。角田を含め多くのドライバーがウェット寄りのセットアップでレースに挑んでいたが、それが裏目に出る格好となった。
“The rain pace was absolutely nowhere, so I’m a bit lost.”(雨のペースはまったくなかった。正直、どうすればいいかわからない)
“Just ‘degging’ [the tyres] like crazy – I never had like this kind of feeling.”(タイヤのデグラデーションがひどすぎた。こんな感覚は初めてだった)
角田自身もF1公式のレース後インタビュー(formula1.com)で、**自身の迷いと、過去にないレベルのタイヤ劣化(デグ)**に困惑をあらわにした。

さらにHaasのオリバー・ベアマンとのターン6での接触により、10秒タイムペナルティが課され、最後尾へと転落。
“I guess yeah, I mean, I deserve the penalty… but it is what it is.”(まあ…そうだね、自分にペナルティは当然だったと思う。でも、それが現実なんだ)
角田は接触について潔く責任を受け入れてはいるが、全体として「レース以前の問題」すら感じさせる苦しい内容だった。
■メキース体制の中での“支援”は本物か?
注目すべきは、角田が「これまで以上にチームからの支援を感じている」と語っている点だ。
“I feel support more than ever from the team leadership, especially in this new phase under Laurent Mekies.”(メキース体制になってから、チームからこれまで以上のサポートを感じている)
“They just wanted me to have fresh air… we’re going to try a couple of things I’ve never tried.”(リフレッシュさせてくれたし、これまで試したことのないアプローチにも挑戦するつもりだ)
これはレース前に南イングランドのリセットプログラムを受けたことに起因し、メキース新代表体制のもとで、チームがメンタルと技術両面での再起を狙っていた証である(formula1.com)。
だが、結果がついてこない今、いくら支援があっても「評価」は待ってはくれない。

■F1DIVE考察:構造がドライバーを壊すとき
今回の最下位は、単なるドライバーの衰えやミスで説明できるものではない。むしろ、マシンそのものの不調と、構造的なバランスの崩壊が原因である可能性が極めて高い。
Red Bullは現在、開発の中心人物だったアドリアン・ニューウェイの離脱後、風洞施設の更新も進まず、マシンの“空力的スイートスポット”を狭めた結果、扱いづらい特性を抱えている。
マックス・フェルスタッペンでさえ「アンダーステアが酷い」と語ったマシン。
その“難物”を角田に背負わせながら、結果だけを求めるのは酷だ。
■降格の足音?それとも再起の序章か?
マルコの決断、育成ドライバーの評価──
すべてが角田の背中を押しているわけではない。
だが、本人は決して諦めてはいない。「新しい試みに挑戦する」と語る姿からは、過去の自己否定ではなく、未来への構築を感じさせる。
最下位であっても、「自分を失っていない」こと。それこそが、F1という残酷な世界で生き残る“最低条件”なのかもしれない。
【F1DIVE編集後記】
今回の角田裕毅の結果は、確かに失望的だ。
だが、失望の裏には「兆し」もある──失われたペース、構造的欠陥、チーム内のサポート──これらを乗り越えた時こそ、角田が“F1トップドライバー”として覚醒する瞬間が訪れるかもしれない。
次戦ベルギー、ここが正念場だ。
