F1 角田裕毅

【F1 DIVE特集】「角田裕毅は遅くない――“世界の20人”とレッドブルでの試練」

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厳しい視線と誤解

MONZA, ITALY – SEPTEMBER 05: Yuki Tsunoda of Japan and Oracle Red Bull Racing walks in the garage during practice ahead of the F1 Grand Prix of Italy at Autodromo Nazionale Monza on September 05, 2025 in Monza, Italy. (Photo by Mark Thompson/Getty Images) // Getty Images / Red Bull Content Pool // SI202509050205 // Usage for editorial use only //

「速さが足りない」「結果が残せていない」「シートを失うのではないか」――。
2025年、レッドブル・レーシングに昇格した角田裕毅に浴びせられる声は厳しい。数字だけを見れば確かに目立つリザルトはなく、去就も騒がれる。

だが忘れてはならない。
角田裕毅は、F1という世界の頂点に立つ20人のひとりだということを。


世界の20人という特別さ

F1グリッドに座れるのは年間わずか20人。
サッカーのW杯は数百人が出場できる。野球のプロ選手は世界で数千人規模。だがF1はたった20。

その座を得るには――

  • 幼少期からカートで勝ち抜き
  • F4、F3、F2と階段を登り
  • 速さだけでなく資金力やチームとの関係を勝ち取り
  • 世界の頂点に挑む覚悟を持つ

数万人の若者が夢を追い、最終的に辿り着くのは20人だけ。
そのひとりが角田裕毅だという事実。それ自体が奇跡であり、尊敬に値する。


下位カテゴリーで積み上げた実力

角田が偶然ここまで来たわけではない。

  • 2018年:F4日本選手権チャンピオン
  • 2019年:FIA F3で勝利、ランキング9位
  • 2020年:FIA F2でルーキーながら3勝、ランキング3位

これらの実績は、スポンサーや国籍に頼らない「純粋な速さと勝負強さ」を世界に証明した。だからこそレッドブルとホンダは彼をF1へ送り込んだ。


F1デビュー:アルファタウリからの衝撃

2021年、アルファタウリでデビューした角田は、開幕戦バーレーンGPでいきなり9位入賞。日本人ドライバー史上初のデビュー戦ポイント獲得を果たした。
その後も予選で鋭い一発を見せ、チームメイトと互角以上に戦う場面も多かった。

ただ同時に、接触やクラッシュなどの未熟さも露呈し、「光と影」が共存したデビューイヤーとなった。


レッドブル昇格:栄光と試練

2025年、角田は念願のトップチーム「レッドブル・レーシング」へ。
だが、ここで待っていたのは夢の舞台であると同時に、これまで以上に厳しい評価の嵐だった。

なぜ角田は、いま成績を残せていないのか。


成績が出ない4つの理由

1. マシン特性と適応の難しさ

レッドブルのマシンは、フェルスタッペンの好みに強く合わせて開発されている。
オーバーステア寄りのピーキーな挙動は、操縦が極めて難しい。
予選一発ではある程度対応できても、決勝の長丁場では安定させるのが難しく、ペースが乱れる原因となっている。

2. 「クリーンなデータ不足」

チーム首脳が求めるのは、ミスや接触がない“クリーンな走行データ”。
しかしモンツァでのフロア破損など、不運も含めたトラブルが続き、純粋な比較材料が揃わない。
そのため「実力を出し切れていない」という評価になりやすい。

3. チームメイト比較のハードル

隣にいるのはワールドチャンピオン、マックス・フェルスタッペン。
同じマシンを操っても、数コンマ遅れるだけで「大差」とみなされてしまう。
これは角田個人だけでなく、他のドライバーも皆苦しんできた壁だ。

4. 基準値の違い

アルファタウリやレーシングブルズ時代は「入賞すれば成功」だった。
しかしレッドブルでは「勝利」「表彰台」が基準。
結果として、以前なら評価されたパフォーマンスも、トップチーム基準では物足りなく見えるのだ。


それでも「遅い」は間違い

これらの要因を踏まえれば、角田の不振は「遅いから」ではないことが分かる。

  • 予選でフェルスタッペンとの差を0.2秒以内に収めた週末
  • Q3進出を果たした瞬間
  • 中団以下のマシンでポイントを持ち帰ってきた過去のレース

こうしたデータは、角田が持つ速さを裏付けている。


日本人ドライバーの宿命

角田は唯一の現役日本人F1ドライバーであり、ホンダ、ファン、メディアからの期待を一身に背負う。
批判の声も多いが、それは「期待されている」裏返しだ。
名前すら挙がらないドライバーも多い中で、角田は常に話題の中心にいる。


本当の問いは「未来」

結局、議論すべきは「速いか遅いか」ではない。
問うべきは、**「角田裕毅はトップで勝てるのか」**だ。

レースペースの改善、ミスの削減、チームとの協力。これらを克服できれば、表彰台や勝利も夢ではない。


角田裕毅は遅くない

角田裕毅は遅くない。
彼は世界の20人に選ばれ、F4・F2で結果を残し、F1に辿り着いた。
そして今、レッドブルという最も厳しい環境で、新たな試練に挑んでいる。

成績が伸び悩むのは「遅いから」ではなく、マシン特性、環境、比較対象という構造的な要因が大きい。
だからこそ、彼が“クリーンなデータ”を積み重ね、安定した速さを示したとき、未来は大きく開ける。

批判の裏にあるのは、彼への期待だ。
角田裕毅という特別な存在が、この試練を乗り越えて羽ばたく瞬間を、私たちは信じて待ちたい。