F1 角田裕毅

角田裕毅、屈辱の最下位──崖っぷちの夏、去就の行方は?

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SPIELBERG, AUSTRIA – JUNE 29: Yuki Tsunoda of Japan and Oracle Red Bull Racing looks on during the F1 Grand Prix of Austria at Red Bull Ring on June 29, 2025 in Spielberg, Austria. (Photo by Mark Thompson/Getty Images) // Getty Images / Red Bull Content Pool // SI202506290669 // Usage for editorial use only //
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オーストリアGPという現実──角田裕毅、沈黙の16位

2025年6月30日、レッドブルのホームグランプリであるオーストリアGP。角田裕毅は予選18番手、決勝16位という厳しい結果に終わった。決勝中のピット戦略は1ストップで、タイヤはC4からC3への切り替え。序盤はDRS圏内に入っていたものの、中盤からグリップ低下とラップタイムの急落が続き、後続に次々と抜かれていく展開となった。

角田はレース後のインタビューで、「何が間違っていたのかすら分からない」と語った。これは単なる敗北の言葉ではなく、自分のドライビングへの疑問、マシンとの不一致、そして“正体不明の迷路”を走り続ける者の苦悩だった。

“正直、何が悪いのか分からない。これだけ遅い理由が分からないんです。”

マシンからのフィードバックは薄く、チームの戦略的支援も目立たなかった。週末全体を通じて、角田は「一人で壁にぶつかっている」ように見えた。

‘I’m not sure what I’m doing wrong to be honest’ – Tsunoda downcast after P16 in Austria
Red Bull’s Yuki Tsunoda cut a disconsolate figure in the media pen after the Austrian Grand Prix, in which he made conta...

タイヤか、マシンか、それとも設計思想か──RB21の落とし穴

角田が語ったもう一つの重要なポイント、それは“タイヤが溶けるように削れていく”という感覚だ。

“1周目は良かった。でもラップを重ねるごとにグリップがなくなる。1コーナーごとにバランスが崩れていく。”

これは単なるセットアップミスではない。RB21のエアロダイナミクスが、特定の空力バランス下でしか機能しない“極端なゾーン型マシン”であることを示している。つまり、タイヤの熱入れ・温度維持・縦横グリップバランスのどれかがズレるだけで、走行性能が崩壊してしまう。

ヘルムート・マルコもこう語っている:

“RB21は綱渡りのようなマシン。少し条件が変わるとバランスを失ってしまう。”

RB21はあまりにも“狭い正解”を要求しすぎている。これは、どれだけ才能があってもドライバー一人では打開できない問題である。


チーム内評価の分裂──ホーナーとマルコの言葉の温度差

クリスチャン・ホーナーはオーストリアGP後、角田に対し厳しいトーンで評価した。

“ユーキはひどかった。予選もダメだったし、ペナルティまで。全てが悪い方向に行った。”

このコメントは結果だけを見た冷たい評価だが、一方でヘルムート・マルコはより構造的な問題を認めた上で、「今ドライバーを変えても意味がない」と語っている。

こうした“首脳陣の視点の違い”こそ、チーム内で角田が直面する困難の一端を象徴している。


レッドブル帝国の構造に飲み込まれる“セカンド”たち

ガスリー、アルボン、ペレス──いずれもレッドブル昇格後にマシンに適応できず、降格や離脱を余儀なくされた。

これは単なる“実力差”ではない。チームが開発・戦略をフェルスタッペン基準に最適化していることが、もう一人のドライバーにとって“毒”になっている可能性がある。

セカンドドライバーに求められるのは、スピード以上に“適応力と犠牲”なのかもしれない。

SPIELBERG, AUSTRIA – JUNE 29: Franco Colapinto of Argentina driving the (43) Alpine F1 A525 Renault and Yuki Tsunoda of Japan driving the (22) Oracle Red Bull Racing RB21 battle for track position on track during the F1 Grand Prix of Austria at Red Bull Ring on June 29, 2025 in Spielberg, Austria. (Photo by Michael Potts/LAT Images) // Getty Images / Red Bull Content Pool // SI202506290741 // Usage for editorial use only //

サマーブレイク前の命運──移籍の可能性を探る

2025年F1カレンダーでは、7月27日のスパ・フランコルシャンを最後にサマーブレイクへ突入する。この2戦(+ハンガリーGP)が角田の運命を分けるタイミングとなる。

✅ 基本的に2026年体制が固まっているチーム(※100%確定ではなく報道・契約に基づく)

  • マクラーレン:ノリス&ピアストリ(複数年契約)
  • フェラーリ:ルクレール&ハミルトン(2026年までの複数年契約で継続見込み)
  • アストンマーチン:アロンソ(契約中)、ストロール(チームオーナーの息子)
  • ハース:オコン&ベアマンは2026年末までの複数年契約。体制継続の可能性が非常に高く、角田の移籍余地は少ない

🔍 契約・体制が未確定または調整中のチーム(移籍の可能性あり)

  • レッドブル:フェルスタッペンは2028年まで契約中だが、契約には特定条件での離脱条項も含まれており、セカンドシートは角田が昇格中ながら2026年以降は未確定(news.com.au
  • メルセデス:ラッセルは2025年末で契約終了予定で延長交渉中。アントネッリも2026年以降は未発表(formula1.com
  • ザウバー(Audi):ヒュルケンベルグは2026年まで契約済。ボルトレートは将来のレギュラー起用候補(reuters.com
  • RB(レーシングブルズ):角田は2025年末までの契約延長が正式発表済。現在はレッドブルで起用中だが、RBとの契約期間中での“昇格扱い”であり、2026年以降の再契約は未定。
  • アルピーヌ:ガスリーは契約延長交渉中。フランコ・コラピントは2025年に複数戦出走済であり、2026年の正ドライバー昇格が有力視されている(motorsport.com
  • キャデラック(アンドレッティ):FIA承認済、2026年参入に向け人選進行中(公式
【F1DIVE的徹底考察】角田裕毅に迫る“2つの未来”──Red Bullの頂か、Aston Martinの革新か
F1 角田 アストンマーチン 2026
SPIELBERG, AUSTRIA – JUNE 29: Yuki Tsunoda of Japan driving the (22) Oracle Red Bull Racing RB21 on track during the F1 Grand Prix of Austria at Red Bull Ring on June 29, 2025 in Spielberg, Austria. (Photo by Rudy Carezzevoli/Getty Images) // Getty Images / Red Bull Content Pool // SI202506290747 // Usage for editorial use only //

いま、角田裕毅が見せているもの

RB21という難解なマシン、チーム内での力学、契約交渉が交錯するなかで、角田は弱音を吐くことなく「前を向く」姿勢を続けている。

“何が悪いのか分からない。でも調べて、修正して、また走るしかない。”

自らを責めるだけでなく、「原因を突き止めて前進しようとする」その姿勢は、F1において極めて尊い。レッドブルの枠に残るか、他チームで再出発するか──いずれの未来にせよ、その誠実さと粘りは、いずれ花開く可能性を秘めている。


残酷な成績の裏で光る“本質”

F1は結果がすべての世界でありながら、その裏にあるストーリーこそがファンの心を動かす。

角田裕毅はいま、“数字では測れない戦い”を続けている。

成績に現れない努力がある。

それを知っている人たちは、決して彼を見捨てないだろう。