F1 考察/戦略分析F1 角田裕毅

退団報道に揺れるな──角田裕毅の“今”を見る目

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SPIELBERG, AUSTRIA – JUNE 28: Yuki Tsunoda of Japan and Oracle Red Bull Racing walks to the garage during qualifying ahead of the F1 Grand Prix of Austria at Red Bull Ring on June 28, 2025 in Spielberg, Austria. (Photo by Mark Thompson/Getty Images) // Getty Images / Red Bull Content Pool // SI202506280317 // Usage for editorial use only //
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SNSを駆け巡る報道とファンの一喜一憂

F1ファンの間ではよく知られているが、東スポ(東京スポーツ)は“刺激的な見出し”や“独自情報”で知られるタブロイド紙だ。今回の報道も、元はBBCの内容を東スポが独自解釈・翻訳したものとされ、そこにさらに“断定的ニュアンス”が加わったことで拡散が加速した。
角田裕毅が今季序盤まで所属していたレッドブル傘下のレーシング・ブルズから昇格し、現在はレッドブル・レーシングで戦っている中──そんな記事が再びSNSを駆け巡った。今回の出どころはBBCとされ、それを引用した東スポ系の報道が国内に拡散。「事実上の退団」「放出濃厚」といったワードに、X(旧Twitter)でもファンが一喜一憂している。

【F1】角田裕毅 今季限りでレッドブル退団「ほぼ確実」 英BBCが報道(東スポWEB) - Yahoo!ニュース
F1レッドブルの角田裕毅(25)が、今季限りで退団する見通しを英公共放送「BBC」が報じた。 角田は4月の日本グランプリ(GP)から緊急昇格したが、その後は低迷が続いており、更迭の機運が高まっ

だが、冷静に見ておきたいのは“文脈”だ。

記事の核心──仮定を既定路線のように扱う危うさ

報道の根幹にあるのは、「今のままの成績であれば」という前提つきの話だ。つまり、それが仮定の域を出ていないにもかかわらず、記事では“既定路線”のように装われている。実際には、角田裕毅の去就に関する正式な発表は一切ない。もちろん、レッドブル陣営からの明言も、ホンダからのコメントも出ていない

成績不振は事実──だがそれだけで決まる話ではない

確かに、F1の世界で結果がすべてであるのは間違いない。今季の角田は開幕から好調を見せていたが、直近の数戦では戦略やタイヤ判断の綻び、マシンアップデートの影響を受けてポイント獲得から遠ざかっている。

しかし、それをもって「放出確定」と断じるのはあまりにも早計だ。

Yuki Tsunoda performs during the FIA Formula1 World Championship at the Red Bull Ring in Spielberg, Austria on June 28, 2025 // Philip Platzer / Red Bull Ring // SI202506280295 // Usage for editorial use only //

ホンダという後ろ盾──角田の存在意義は“政治”にもある

重要なのは、今も角田が**“ホンダPUを背負う唯一の日本人ドライバー”であることだ。開幕当初所属していたレーシング・ブルズ(レッドブル傘下チーム)はホンダのPUを搭載する実質的な“準ワークス”状態であり、ホンダとの関係性を維持する意味でも角田の存在は政治的・技術的な橋渡しとなっている。特に2026年以降、ホンダがアストンマーチンと組むことを考えると、角田の存在は戦略的にすら重要だ。

言い換えれば、「このまま」では確かに危うい。だが、「このままでない」可能性がまだ十分に残されているということだ。

真の勝負はこれから──後半戦こそが鍵を握る

むしろ、ここからの後半戦──特にヨーロッパラウンド終盤からアジア・中東にかけてのパフォーマンスこそが、角田の未来を決めるカギとなる。

仮に将来的にレッドブル・レーシングから離れることになったとしても、それが即F1離脱を意味するわけではない。既にファンや一部専門筋の間では、2026年以降のホンダPU×アストンマーチンの文脈で、角田の“移籍”がささやかれている。

アストンマーチンとホンダ──“新章”の可能性へ

前回F1 DIVEでも紹介したように、アストンマーチンはエイドリアン・ニューウェイの加入などにより、体制強化が進むチームだ。そしてホンダは、そのアストンと共に再びF1タイトルを目指す。その文脈に、角田の名前が載るのはごく自然な流れだろう。

【F1DIVE的徹底考察】角田裕毅に迫る“2つの未来”──Red Bullの頂か、Aston Martinの革新か
F1 角田 アストンマーチン 2026

結論──報道に踊らされず、“今”に注目せよ

報道に一喜一憂するのはF1ファンの醍醐味の一つだ。だが、その報道が“公式発表”ではないことを忘れてはならない。むしろ今は、角田裕毅が「このまま」では終わらないことを信じ、彼の戦いに注目すべきタイミングだ。

──角田裕毅のF1人生は、まだ終わっていない。
そして、その先には“新たな章”の扉が待っているかもしれない。